• TOP
  • Discover Nippon
  • 沖縄の自然と文化から生まれる、ゆるぎないうつくしさ。手づくりコスメのお店「FROMO」

沖縄の自然と文化から生まれる、ゆるぎないうつくしさ。手づくりコスメのお店「FROMO」

2017.05.08 Discover Nippon セソコマサユキ & 新里南

かわいらしい木製の扉をあけると、目を閉じてスーっと深呼吸したくなるような、そんなやさしい香りに包まれた。ここは沖縄本島中部、嘉手納(かでな)町にひっそりと佇む、手づくりコスメのお店「FROMO(フローモ)」。静かな住宅街に溶け込むようにしてあり、店内から漂うその香りからは、海や植物など沖縄の自然がほのかに感じられる。

香りの先に並んでいたのは、ハイビスカス、月桃、クチャ(泥)、ウコンなど、すべて沖縄の自然素材をつかって丁寧に手づくりされた石鹸たち。窓から降りそそぐやわらかい日差しと、パステルカラーのそれが不思議と調和している。

「クチャの石鹸は、女性はもちろん、男性にも人気です。奥様が使われていた石鹸の減りが早いと思ったら、こっそりご主人が使っていた、というご夫婦もいらっしゃって(笑)。男性からは『これを使ったら汗の匂いが変わって、臭くなくなった』という声もいただいてます」。

そう笑って話してくれたのは、オーナーの石渡みち代(いしわた・みちよ)さん。もともとは東京で洗剤や石鹸などを手がける大手メーカーの研究職として、商品の開発に携わっていたという。15年前に沖縄へ移住。沖縄素材との出会いは、その後につとめた地元の化粧品会社だった。

「乾燥肌で皮がむけたり、紫外線で湿疹ができたり… もともと肌トラブルが多い方だったんですが、そのとき開発を担当していた月桃の蒸留水を肌につけたら、トラブルがおさまったんです。それがきっかけで沖縄の自然素材の可能性を広げたくて、オリジナルの化粧品をつくりはじめるようになりました」。

そうしてオリジナルブランド「FROMO」を立ち上げ、独立。石渡さんのアイディアによって、様々な素材が石鹸やUVクリーム、バスソルトなどに生まれ変わった。いまでは石鹸だけでも8種類近くある。「こんなにたくさんあったら選べないわ」という方は、FROMOのネイチャーエレメントをぜひ参考にしてほしい。これは地・太陽・海・風・月といった5つの自然のシンボルを軸に、商品の癒しの効果を紐付けたもので、石渡さんが考える沖縄の自然観が図式化されている。

「沖縄の人たちの暮らしは、自然のサイクルをとても大事にしている気がして。そんな風に自分がぼんやり思っていたことを知人のユタ(巫女)に話したらやっぱりそうだった。彼女の話も参考にしながら、この5つのエレメントを形にしました」。

人は気分が沈んでる日もあれば、ハイになっている日もある。心の状態に陰と陽があるように、自然もその2つに分類できるのだそう。例えば、肌をみずみずしく潤したいときは、活力のシンボルである「太陽」の石鹸「OKINAWAN FLOWER(オキナワンフラワー)」がおすすめ。お店周辺に咲いているハイビスカスを素材としていて、その赤く元気な色を見ているだけでも気分が明るくなってくる。

同じように、沖縄の文化からヒントを得て生まれたのが「2830(ニーハチサンゼロ)」というスキンケアブランド。自家製のハチミツをメイン素材としていて、商品名の28は女性の身体と月の満ち欠けのサイクルを、30は働き蜂の寿命をあらわしている。

「移住したての頃に習っていた三線の先生が、よく月の満ち欠けや、潮の満ち引きの話をしてくれました。毎年お盆の日に満月の下で行われる伝統芸能のエイサーは、太陽暦ではなく、旧暦で計算しているから、必ず満月の下でできるんだって話を聞いたとき、なるほどなと思いました。沖縄では旧暦文化、自然のリズムが、暮らしに根付いている。それをヒントに色々調べてみると、人の身体もそのサイクルを意識することで自然と整うようになることがわかったんです」。

例えば、満月から新月に向けて、月がスリムになっていく期間は、人の身体も要らないものを捨てるのに適した「浄化期」なのだそうだ。だからむくみやくすみをとったり「ケア」をするのに向いているのだそう。もちろんダイエットもこの期間が◎。一方で「再生期」とされる新月から満月の間は、月が大きくなるにつれて人間の身体も吸収力が高まるから、ハリやシワのお手入れや、ダイエットとは逆で、筋肉をつけるのに適した期間。2830は、その考え方に基づいて、再生期と浄化期の2パターンのスキンケアを展開している。

素材のハチミツは、お店の裏で養蜂しているもの。蜜源となるタチアワユキセンダングサは、沖縄の街のあちこちで自生している植物。白く、ちいさな花から採れる蜜は、ポリュフェノールが多く含まれていて、一般のハチミツにはない、コラーゲンをつくる成分「ビタミンB6」や「ビタミンB7」も豊富だそうだ。「絶対このハチミツを化粧品に使いたいと思っていた」と語る石渡さん。そのご主人もまた、趣味の一つとして養蜂をしたいと考えていたそうで、自然な流れで4年前に夫婦ではじめたそうだ。ハチミツが収穫できるのは、春と秋の2回だけ。大量生産はできないけれど、食用でも販売しているハチミツは、40個が1日であっという間に完売してしまったこともあるそうだ。

もともと移住のきっかけは、ご主人の仕事の都合だった。「本当は沖縄に行きたくなかったんです」と本音を漏らす石渡さん。実際に住みはじめてからも、苦労は多かったという。

「沖縄には知り合いもまったくいなかったし、東京でやっていたような職種の仕事もない。だから自分の存在価値がなくなってしまったようで、精神的に少しつらかった期間もありました。だけど海と空を赤く染める夕焼け、青く輝く珊瑚の海… そんな日常の何気ない風景に触れていくうちに、沖縄の自然のエネルギーを感じて、人間は自然の中で生かされているんだと思いました。いまは沖縄にきて本当によかったと思います」。

お店の裏にあるテラスからは、比謝川を見渡すうつくしい眺望がひろがっていた。日が暮れるころ、ちょうど海の方に真っ赤な太陽が落ちていくのだそうだ。それはそれは、うつくしい夕焼けが見られるという。「ここでぼーっとしてるだけでリラックスできます。夕日を眺めながら飲むビールは最高ですよ(笑)」

決して通りすがりでは気づくことのないような住宅街へお店を建てることに迷いもあったけれど、ここにしようと決めたのは、このテラスに一目惚れしたから。眺望ももちろんだが、石渡さんを歓迎するかのように、たくさんの蝶がひらひらと舞う姿に縁を感じたのだという。そう、FROMOのロゴマークは蝶なのだ。

「蝶って本人はわかってないと思うんですけど、ひらひら飛びながらも、受粉という自然界では重要な役割を担っているんですよね。自分がお店をやる上で大事にしたい『自然との共生』のシンボルのように思えて、ロゴマークに採用しました。さらにこれは後から聞いた話ですが、沖縄では昔から天の使いといわれる縁起のいい生物なんです」。

普段の暮らしの中でも月の満ち欠けを意識しているという石渡さん。いまも忙しい毎日を送っているけれど、移住前の忙しさとは違うという。

「東京にいたときも仕事が楽しかったけど、いま振り返れば常にプレッシャーやストレスがあった。肌もボロボロでしたね。だから女性の肌はとてもメンタルが大事。そのことを沖縄の自然、文化から教わりました」。

彼女がいつも心がけているのは、無理をせず、自然のリズムに寄り添うように暮らすこと。心の健康状態を保つことが、どんなに高いコスメを使うより一番肌に良いから。このお店に漂う華やかな香りとともに、彼女が手に入れたそのゆるぎないうつくしさは、古くからこの沖縄で育まれてきた自然と文化からの賜り物なのだ。

<問い合わせ>
FROMO
住所/沖縄県嘉手納町水釡476-7229
電話/098-956-2324
営業時間/13:00~18:30 ※日曜のみ18:00まで 定休日/月・火・水
URL/http://www.fromo.jp

編集・写真/セソコマサユキ
沖縄在住の編集者・ライター。雑誌「カメラ日和」「自休自足」副編集長を経て、手紙社で紙媒体の編集、イベントの企画・運営などを手がけたのち、2012年、独立を機に沖縄に移住。さまざまな媒体での編集、ライティング、撮影を通して独自の目線で沖縄の魅力を発信している。観光情報サイト「沖縄CLIP」編集長。著書に『あたらしい沖縄旅行』『あたらしい離島旅行』(WAVE出版刊)、「あたらしい移住のカタチ」(マイナビ出版)、企画・制作に「みんなの沖縄」(主婦の友社)がある。http://masayukisesoko.com
photo by G-KEN

文/新里南 しんざと みなみ
ライター。1986年東京生まれ、沖縄育ち。東京で10年ほどWEB制作のディレクターを経験したのち、2016年5月より故郷・沖縄へUターン。現在、沖縄観光メディアのディレクターをつとめつつ、ライターとしても活動中。多くの人にとっては海を隔てた遠い場所かもしれない沖縄を少しでも身近に感じてもらえるよう、自由な視点でいまの沖縄を発信していきたいと思っている。2016年12月発売の「みんなの沖縄」(主婦の友社)では編集アシスタントを担当。

この記事に関連するキーワード:セソコマサユキ天然素材手作り石鹸沖縄

RECOMMEND今週の人気記事