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沖縄の自然が生み出す、世界にひとつだけの輝き。シェルアクセサリー「kainowa」

2017.04.28 Discover Nippon セソコマサユキ & 新里南

夜に光る貝。そんな幻想的な名をもつ貝がある。でも、かつて屋久島近海でよく採れたことから「屋久貝」と呼ばれ、それが転じてこの名がついたという説が有力で、実際に発光するわけではない。幻想的な名から想像すると、意表をつかれるほどの大型でゴツゴツとした見た目に驚く。でもその表面を削っていくと、隠れた真珠層が顔を出すのだ。3年間でたった7センチほど、時間をかけてゆっくりと大きくなるこの貝は、他の貝類と比べても真珠層が緻密なのが特徴だ。削り出された「夜光貝(ヤコウガイ)」はその名の通り、夜の深い暗闇のなかでも光り輝くのではないかと思うほど、魅惑的な光沢を放つ。

写真:kainowa提供

そのうつくしさに惹かれて、夜光貝でアクセサリーを作りつづける職人が沖縄にいる。人口500人余りのちいさな島「浜比嘉島(はまひがじま)」に工房を構えるkainowa(かいのわ)の川初真(かわはつ・まこと)さんだ。ひとつひとつ彼が手づくりしたアクセサリーを、奥さんの純子(じゅんこ)さんがお客さんの手元に届ける。島の集落に溶け込むように佇むこの工房は、おだやかな夫婦ふたりが二人三脚で営んでいる。

もともとモノづくりの経験はまったくなかったという真さんが、アクセサリーづくりを始めたのは今から約7年前。ダイビングのインストラクターだった真さんは、結婚を機に安定した職を求めて外資系の会社に就職。しかし、ハードワークがつづく毎日に「なんのために仕事をしているのだろう」と自問するようになったという。ついに身も心も壊れる寸前まで気持ちが落ち込み、退職を決意。少し心を休めながら、職探しをしていたときのことだった。

「ダイビングのインストラクターをしていたころに拾った夜光貝が、ゴロゴロと部屋に転がっているのを見て、ふと磨いてみようかと思いついて。時間はたっぷりあったので(笑)」と、真さん。

振り返れば、勤めていたダイビングショップのオーナーもよく貝を磨いていて、それが綺麗だったという記憶がぼんやりと残っていた。もちろん工具も何もない環境だったけれど、指輪からつくりはじめてみた。穴を開けてみよう、次は割ってみよう… ホームセンターに行っては貝の加工に使えそうな道具を探し、試行錯誤しながら少しずつ指輪の形に近づけていく。ようやくできたはじめての指輪は、いびつでも今までに見たことのない、うつくしい貝の表情があったという。「きれいだなって、素直に思ったんです」。

夜光貝は個体差が大きく、色の厚みや模様はそれぞれぜんぜん違う。「こんな表情があるんだ」という“驚き”と“発見”があるから、いくつものアクセサリーを作りつづけてきた今でも飽きることはない。その表情の多様性が真さんが惹きこまれた魅力のひとつであり、そこにアクセサリー作りの難しさもあるのだ。

写真:kainowa提供

写真:kainowa提供

「ひとつひとつ違う個性を持った貝に対して、型にはまった作り方はありません。『どんな表情(模様)が出てくるのかな?』『どこをどう残せば一番きれいだろう?』と眺めては、貝との対話を繰り返していく。実はこの時間が一番長くて、大事な工程なんです」。例えばペンダントトップにしよう、と思っていても、削ってあらわれた模様がイメージと合わず、手が止まることもあるそうだ。そんなときは、無理せず作業を止める。一度寝かせて、また忘れたころに貝と向き合うと、その個体にあった姿をイメージすることができるから。ひとつひとつの貝と向き合うには、じっくり時間をかけて対話を重ねることが必要なのだ。

工房ではアクセサリーたちが、光の加減や見る角度でそれぞれに違った輝きを放っていた。そのうつくしさに見惚れていると「きれいですよね」とつくり手である真さんも声を漏らす。「もともと貝が持ってるデザインだけで十分きれいなんです。このうつくしさをお客さんにも素直に見てほしい」。だからkainowaのアクセサリーに余計な装飾は一切ない。指輪はもちろん、ネックレスなども貝をメインにチェーンやヒモをくくり付けただけのシンプルなものばかりだ。そこには貝のうつくしさをより際立たせたいという想いと、貝に対する真さんの敬意が込められている。

大きな扉から、心地良い風が入ってきた。この工房兼ギャラリーは、自宅の倉庫を改装したもの。イベント出店という販売スタイルを辞め、店舗をもつようになったのは、貝に興味を持ってくれるお客さんにきちんとその魅力を伝え、届けたいという想いから。本島と橋でつながっているとはいえ、離島のちいさな集落のなか。那覇市内からは車でも1時間強。たまたま通りかかる、なんてことはほとんどないこの場所に、その魅力に引き寄せられるようにして人はやってくる。

「工房に来るには、観光地でもない集落に足を踏み入れて、さらに民家の敷地内に入ってもらわなきゃいけないんです。わかりづらい場所だけれど、そのことによって浜比嘉島の暮らしを感じてほしくて」。そう語る真さんの生活は、那覇から浜比嘉島に引っ越してきてからの3年間でだいぶ変わったという。海が目の前にある自然豊かなこの島には、静かでおだやかな空気が流れている。そんな環境でアクセサリーづくりにいそしんだり、島の行事に参加するために三線をならったり、家の屋上から満天の星を眺めたり…。お散歩がてらに集落を歩けば「この野菜もっていきなさい」と近所の人に声をかけられる。ここには、自然と島の人たちとが寄り添い助け合う、昔ながらの穏やかな暮らしがある。

「私たちはこの島に暮らさせていただいて、このお仕事をさせていただいて、この島の人々含め、周りに支えられて生活しています。とてもシンプルな毎日ですが、幸せに満ち溢れてます」(純子さん)。この笑顔を見れば、ふたりの言葉に誰もが納得するはずだ。

「無理やり手に入れたわけではなくて、貝が持っているのは自然のサイクルのなかで生まれたうつくしさなんですよね。自分たちの生活も少し力の抜けた、自然体が大事なんだと貝からおしえられた気がします。そうしていれば、本来いるべきところに行くような気がしていて。だからいま、僕たちはこの島でこの仕事をしてるんだと思います」。

そう語るふたりの姿からは、内側から滲み出るようなうつくしさを感じる。それは世界に二つとない、彼らだけが放つことのできる光で輝いている。夜光貝がありのままの姿のなかに秘める、唯一無二のうつくしさと同じように。

<問い合わせ>
kainowa
住所/沖縄県うるま市勝連浜97
電話/098-977-7860
営業時間/12:00〜17:00 ※土日のみ営業。但し事前連絡により平日も対応可能
URL/http://kainowa.com

編集・写真/セソコマサユキ
沖縄在住の編集者・ライター。雑誌「カメラ日和」「自休自足」副編集長を経て、手紙社で紙媒体の編集、イベントの企画・運営などを手がけたのち、2012年、独立を機に沖縄に移住。さまざまな媒体での編集、ライティング、撮影を通して独自の目線で沖縄の魅力を発信している。観光情報サイト「沖縄CLIP」編集長。著書に『あたらしい沖縄旅行』『あたらしい離島旅行』(WAVE出版刊)、「あたらしい移住のカタチ」(マイナビ出版)、企画・制作に「みんなの沖縄」(主婦の友社)がある。http://masayukisesoko.com
photo by G-KEN

文/新里南 しんざと みなみ
ライター。1986年東京生まれ、沖縄育ち。東京で10年ほどWEB制作のディレクターを経験したのち、2016年5月より故郷・沖縄へUターン。現在、沖縄観光メディアのディレクターをつとめつつ、ライターとしても活動中。多くの人にとっては海を隔てた遠い場所かもしれない沖縄を少しでも身近に感じてもらえるよう、自由な視点でいまの沖縄を発信していきたいと思っている。2016年12月発売の「みんなの沖縄」(主婦の友社)では編集アシスタントを担当。

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