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自分らしくいられる服をつくる。沖縄から世界に発信するファッションブランド「HIGA」

2017.04.05 Discover Nippon セソコマサユキ & 新里南

観光客でにぎわう那覇・国際通りから道をそれたところにある「浮島(うきしま)通り」。洗練されたセレクトショップや古着屋、カフェなどが点在し、国際通りの雑多なにぎわいとは違い、通り全体に心地よい静けさが漂っている。

年数を重ねた趣深いマンションの敷地に入り、植物と交わうようにしてある大きならせん階段を登る。するとたどり着くドアのひとつに「THE ROOM BOUTIQUE OKINAWA」の文字がひっそりと記されている。通り沿いにあるとはいえ、看板もないこの場所には、きっと「通りすがり」ではたどり着けないだろう。扉を開け、事前に問い合わせがあったにときだけ開放しているという店内にはいると、スッと背筋が伸びるような都会的な音楽が流れ、洗練された空間が広がっていた。ここが沖縄発のファッションブランド「HIGA」の実店舗。案内してくれたのはHIGAのオーナーであり、デザイナーの比嘉一成(ひが・いっせい)さんだ。

「どこにいても自分らしくいられる服」をコンセプトとする比嘉さんのデザインは、どれもシンプル。だけど実はものすごくディティールにこだわったつくりをしている。

「服を買うとき、人それぞれ何か惹きよせられるようなものがあるはず。僕の場合は、ステッチの幅とか、ポケットの大きさとか、人が気づかないようなところにこだわった、じわじわくるカッコよさみたいなところに惹かれるんです。控えめでありながらも、存在感のある服をつくりたいと思っています」。

そんな彼が見せてくれたのは、一着の服でも複数の布を使って表情を変化させたワンピースや、一見上品に見えるドレスでも、裏地は通気性が良いメッシュ素材を使ったものなど。どれもパッとみただけでは見逃してしまいそうなポイントに、彼のこだわりが凝縮されていた。

写真:camenokostudio(大城亘)

「こんな服を作りたいって思ったとき、1度では思い通りにいかないことも多くて、2~3回サンプルをつくります。例えば、上着のポケットの位置。高くするとカッチリした印象になり、低くするとゆるい抜け感が出る。また、サイズを大きくすればかっこいい存在感が出てくるし、逆に小さいとかわいさが生まれる。そういった細かい部分を洋服の全体感を見ながら微調整を繰り返していくんです」。

それだけディティールにこだわると、現場では敬遠されるような手間のかかる縫製作業も出てくるという。それでもしっかり形にできるのは、ブランドを立ち上げる前に勤めていた会社での経験があるから。もともと服飾の専門学校時代からデザイナーとしての独立願望はあったが、卒業後は業界を知るためにアパレルメーカーに就職。モノづくりが見える環境で営業を担当し、現場のおばちゃんたちに作業をお願いしながら、そして自身も手伝いながら、服がゼロからできあがっていく過程を見てきた。デザインするときも、現場の気持ちがわかるし、つくりあげるまでの大変さがわかるから、「大変ですよね」という声をかけられる。その会話によって現場がうまく回って、丁寧なものづくりに繋がる。それはちょっとした違いかもしれないけれど、ただオーダーを受けただけの作業との仕上がりの違いは、実は大きいのではないかという気がする。

「僕だけでは成り立たないです。現場のメンバー、そして何より着る人あっての服づくりなので。」。着る人を気遣うモノづくりが比嘉さん流だ。HIGAの前身ブランドであるCOVERでは、冷え性に悩む女性に心地よく履いてもらうため、レギンスにホッカイロが入るポケットをつくったそうだ。

「カッコいい服をつくりたいとは思うけど、疲れたり、嫌になったりするものは作りたくない。着ることでリラックスできるような服づくりを心がけています」。彼の服が受け入れられているのは、デザインが良い、ということだけではなく、服を着ることで感じられる、その心遣いがあるからだろう。

最近はメンズも展開しているそうだが、やはりスカートやワンピースなど洋服の表情に幅がある女性服が楽しいという。「何より、女性がおしゃれをして、テンションが上がっているのを見ると、うれしいですよね。僕は そのお手伝いをしたいと思ってます」。“お手伝い”という謙虚な言葉が、いかにも比嘉さんらしい。

写真:camenokostudio(大城亘)

独立6年目の2015年には、沖縄のブランドでは初めてとなる「東京コレクション」のステージを飾った。演出はトップブランドのパリコレや東コレの演出を手がける若槻善雄(わかつき・よしお)さんに依頼し、モデルを海の中で泳ぐ魚に見立てた空間をつくりあげたという。コンセプトに「都会と自然の融合」 を掲げ、天然素材で染めた琉球藍染や、沖縄の植物「ブーゲンビリア」や「ガジュマル」からヒントを得たデザインで沖縄らしさを表現した。

東京コレクションは、前身のCOVERからHIGAにリブランドする、そのお披露目の場でもあった。大事なブランドの看板を変えたのは、これから県外や海外に向けて発信する場が増えてくるなかで、よりわかりやすく、オリジナリティのある名前で、“自分らしさ”を発信したいという想いがあったから。沖縄の姓であり、自分の名前でもある「HIGA」(比嘉)は、“らしさ”を表現するにはふさわしいブランド名なのだ。

「僕たちは自然に触れて、土に触れて、澄んだ空気を触れて、モノづくりをしています。沖縄を拠点にするブランドが出す洋服ってこういうのなんですって世界に発信したかった。沖縄から東京と同じレベル、またはそれ以上のものを出したいという想いがあるんです」。

東京で働いた経験もある比嘉さんだが、拠点を沖縄にしてよかったと、改めて振りかえる。「ファッションにおいて、沖縄はまだまだ発展途上の場所。そこでゼロからスタートするのは大変だったけれど、沖縄の自然に救われた部分がたくさんある。そんなオンオフの切り替えがすぐできる環境にいることは、モノづくりにおいてとても大事」。

比嘉さんはよく仕事で行き詰まったときに、本島南部の南城市(なんじょうし)まで車を走らせ、カフェ「森のテラス」を訪れるという。お気に入りだというテラス席からは、緑あふれるうつくしい庭園風景が広がる。ゆっくりとした時間がながれるこの場所で、デザインのヒントが生まれてくることもあるそうだ。

夢は学生のころに掲げた「パリコレ」に出ること。「生きてるうちに出れたらいいなあと思いますけどねえ…」とまた控えめに語る比嘉さん。実際に会ってみると、比嘉さんはその洗練されたデザインからは想像できないほど、気さくでやわらかな笑顔をみせる人。「ものづくりは人がいないと成り立たないし、人が関わることで温かみのあるものが生まれるんだと思います」。彼の服を着たひとが笑顔になれるのは、着ることでその温かみに触れ、心まで軽くしてくれるから。

<問い合わせ>
HIGA
住所/沖縄県那覇市松尾 2-12-14-301
URL/http://higa.jp

編集・写真/セソコマサユキ
沖縄在住の編集者・ライター。雑誌「カメラ日和」「自休自足」副編集長を経て、手紙社で紙媒体の編集、イベントの企画・運営などを手がけたのち、2012年、独立を機に沖縄に移住。さまざまな媒体での編集、ライティング、撮影を通して独自の目線で沖縄の魅力を発信している。観光情報サイト「沖縄CLIP」編集長。著書に『あたらしい沖縄旅行』『あたらしい離島旅行』(WAVE出版刊)、「あたらしい移住のカタチ」(マイナビ出版)、企画・制作に「みんなの沖縄」(主婦の友社)がある。http://masayukisesoko.com
photo by G-KEN

文/新里南 しんざと みなみ
ライター。1986年東京生まれ、沖縄育ち。東京で10年ほどWEB制作のディレクターを経験したのち、2016年5月より故郷・沖縄へUターン。現在、沖縄観光メディアのディレクターをつとめつつ、ライターとしても活動中。多くの人にとっては海を隔てた遠い場所かもしれない沖縄を少しでも身近に感じてもらえるよう、自由な視点でいまの沖縄を発信していきたいと思っている。2016年12月発売の「みんなの沖縄」(主婦の友社)では編集アシスタントを担当。

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