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うつくしい身体は朝の美食から。沖縄第一ホテルの身体がよろこぶ朝ごはん。

2017.02.28 Discover Nippon セソコマサユキ & 新里南

沖縄の朝は、ゆったり時間が流れているように思う。もちろん、通勤ラッシュという時間帯はあるけれど、車社会の沖縄に「満員電車」という言葉や、その車内に漂う緊迫感はない。週末ともなれば、多くの人々が動き出すのがお昼頃からというのも、その理由のひとつかもしれない。冬が終わり、沖縄らしさを取り戻す3~4月は、「うりずん」と呼ばれる。沖縄の言葉で「潤い始め」を意味するこの季節は、大地が潤いを取り戻し、やわらかい風が吹く。1年のなかでも特に朝の時間が心地良いころだ。

そんな朝の時間をより豊かにしてくれるのが「朝食」だ。「お酒好き」のイメージもあって夜型といわれる沖縄は、事実、朝食スポットはそれほど多くはない。そんななかで40年ほど前から「沖縄らしさ」にこだわった朝食を提供し続けている場所がある。那覇市・牧志(まきし)にある「沖縄第一ホテル」は、国際通りのすぐそばの立地ながら、緑豊かな中庭や、レトロ感のある内装が喧騒を忘れさせてくれる、知る人ぞ知る人気のホテルだ。

食卓につくと、その品数とうつくしさに思わず感嘆のため息が漏れる。島の野菜をふんだんに使ったというさまざまな料理が、沖縄の海を彷彿させる青、首里城にも使われている漆の朱(あか)など、沖縄カラーを纏う鮮やかな器たちに、ひとつひとつ丁寧に盛り付けされた、薬膳朝食をいただくことができるのだ。

「沖縄の島野菜は、栄養価が高く、世界に誇れるお野菜なんです」と語るのは、女将としてホテルをきりもりする渡辺克江(わたなべ・かつえ)さん。野菜ソムリエや国際中医薬膳師の資格をもつ彼女の言葉が、料理の味により深みを与えてくれる。

渡辺さんが女性にぜひ食べてほしいとすすめてくれたのが、長い命の草と書く野菜「長命草(ちょうめいそう)」のサラダ。青汁でおなじみのアシタバやケールよりもさらに栄養バランスが優れていて、ダイエットにも良いそうだ。

かわいらしいミニグラスに注がれた3色のドリンクは、左から豆乳、シークヮーサージュース、そして先ほどの長命草を飲みやすいジュースにしたもの。自家製という豆乳は、豆の甘みがわかる濃厚な口当たり。長命草も青汁のような色合いだけれど、すっと飲めて喉を通るほのかな苦味も心地いい。

朝の胃腸にやさしい「ゆしどうふ」は、温かいうちに召し上がれ。 “長寿三代食品”の一つといわれる、沖縄でおなじみの「島どうふ」を、型入れせずにふわふわの状態でいただくのが「ゆしどうふ」だ。「おぼろ豆腐」と比べて栄養価が高く、たんぱく質が豊富に含まれている。透き通るようなブルーの器に浮かぶアーサ(海藻)からは海の香りがする。

ひときわ目を引く鮮やかなオレンジが、島人参の甘辛炒め。「島人参は、一般的な人参よりもβカロテンが豊富。身体の抗酸化力を高めてくれます」と渡辺さん。抗酸化作用のある食材は、今ではよく耳にするようになったアンチエイジングにも効果的だという。

料理ひとつひとつの説明を聞くと、その効能の高さに目を丸くするのだが、これだけの品数を食べても585kcalというバランスの良さには思わず唸ってしまう。

「これだけのものを朝食で一度に食べるのが身体には一番良いんです。セカンドファーストといって、その日の最初の食事でしっかり野菜をとることで、2食目も血糖値をあがりにくくするといわれています。だから朝の野菜ってとっても大切なんですよ」 …そう話す渡辺さんだが、20代の食生活はひどかったという。

「20代は東京で働いていたけど、ハードな仕事で食生活はボロボロ。外食やコンビニ弁当も多かった。結局、体調を崩して沖縄に戻ってきたんです。母の料理を食べていたら10キロ増えた体重が半年でもとに戻って、体調も1年ですっかり良くなった。食事ってすごく大事なんだなとその頃から気づき始めました」

今では「絶対野菜からしか食べない」という徹底ぶり。その背景には、ホテルの創業者でもある母の存在がある。まだまだ島野菜が注目されていない40年前の沖縄で、その魅力を伝えようとこの朝食をはじめた仕掛け人だ。幼い頃から母がつくる食卓には、島野菜がたくさん並んでいたという。

母の教えは、おばぁの時代から受け継いだもの。今度はその教えを、渡辺さんが次の世代につなごうとしている。「お客様が野菜を残しているのを見ると『残ってるよ? 食べたほうがいいよ?』って言っちゃうんですよね」と笑う。それは、島野菜がどれほど体に良いか、身をもって知っているから。その魅力は少しずつ広まって、いまでは女性だけでなく男性も含め、美意識の高い20~30代のお客様が増えているそうだ。

幼少期からホテルのロビーで育ち、人が好きだという彼女は、ここにくるといつだって笑顔で迎えて入れてくれる。その母のような懐の深い笑顔を見るたびに、いつもホッとするのだ。「『あのお店おいしかったけど、渡辺さん行った?』ってお客様がおしえてくれるんですよ」。もともと食べることが大好きで、お客様ともよく情報交換をしているという。日々食を通して、人と接する今の仕事はきっと天職なのだろう。それは、輝いている彼女の表情を見れば、誰もが納得するはずだ。



食事中、窓に目を向けると、庭園には「うりずん」らしくみずみずしく輝く緑の風景が広がっていた。庭に差し込むやわらかい日差しと、ふわりと漂う風がまた心地よい。ゆったりとした時間の流れを感じながらいただく、身体にやさしい朝食。心と体を内側から健やかにしてくれるような贅沢な朝の時間が、ここにはある。

<店舗情報>
沖縄第一ホテル
住所/那覇市牧志1-1-12
電話/098-867-3116
営業時間/朝食は8:00、9:00、10:00の時間制
定休日/不定休
URL/http://okinawadaiichihotel.ti-da.net/

編集・写真/セソコマサユキ
沖縄在住の編集者・ライター。雑誌「カメラ日和」「自休自足」副編集長を経て、手紙社で紙媒体の編集、イベントの企画・運営などを手がけたのち、2012年、独立を機に沖縄に移住。さまざまな媒体での編集、ライティング、撮影を通して独自の目線で沖縄の魅力を発信している。観光情報サイト「沖縄CLIP」編集長。著書に『あたらしい沖縄旅行』『あたらしい離島旅行』(WAVE出版刊)、「あたらしい移住のカタチ」(マイナビ出版)、企画・制作に「みんなの沖縄」(主婦の友社)がある。http://masayukisesoko.com
photo by G-KEN

文/新里南 しんざと みなみ
ライター。1986年東京生まれ、沖縄育ち。東京で10年ほどWEB制作のディレクターを経験したのち、2016年5月より故郷・沖縄へUターン。現在、沖縄観光メディアのディレクターをつとめつつ、ライターとしても活動中。多くの人にとっては海を隔てた遠い場所かもしれない沖縄を少しでも身近に感じてもらえるよう、自由な視点でいまの沖縄を発信していきたいと思っている。2016年12月発売の「みんなの沖縄」(主婦の友社)では編集アシスタントを担当。

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