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人気ドラマのガーデンも手がける女性ガーデナー「上野砂由紀さん」に聞く、ガーデンづくりへの想いとハーブを美容に取り入れるコツ

2017.09.01 Discover Nippon 村田一樹

「魅せる農場」の中にイングリッシュガーデンを

倉本聰が脚本を手がけたドラマ「風のガーデン」の舞台をはじめ、多くのガーデンデザインを手がけるガーデナーの上野砂由紀さん。今や日本全国から多くの人々が訪れるガーデン「上野ファーム」はどのようにして作り上げられたのか。そして、そんな美しいガーデンを作り上げる上野さんが考える「美」とは。

上野ファームは北海道旭川市の北部、全国的に有名な旭山動物園からほど近い田園地帯にある。いわゆるイングリッシュガーデンがベースになっているが、そもそもなぜイングリッシュガーデンなのだろうか。

「我が家は代々米農家で、私は5代目になります。お米の直売が解禁されたことをきっかけに、我が家もいち早く直売を始めました。すると、これまでにはなかった消費者との接点ができ、お客様が農場へお米を買いに来てくださるようになりました。そこで、せっかく足を運んでくださった方々が目で見ても楽しめる農場にしようと考え、『魅せる農場』をスローガンに田んぼのあぜ道に母が花を植え始めたのが上野ファームのはじまりです。そんな時に、ちょうどガーデニングブームが起こって、イングリッシュガーデンの文化も日本に入ってきました。それを母が、見よう見まねでハーブなどを植えて、イングリッシュガーデンを目指していったんです」

今や日本を代表するガーデナーの一人である上野さんだが、元々は札幌でアパレル関係の仕事をするなど植物とは無縁の生活だった。しかしある日突然、上野さんにガーデナーとしての道が開かれることになる。

「昔から海外で暮らしてみたい、留学してみたいという夢があったのですが、たまたま通勤途中の地下鉄で目にしたプチ留学の広告にイングリッシュガーデンのコースがあったんです。せっかくならただの語学留学よりも、何かスキルを身につけて帰ってきたいと思い、花の名前も何も知らない状態で単純な興味だけでイギリスへ行きました。イギリスではあくまで研修生だったので、学んだことは本当に基礎的なことだけでしたが、ガーデンデザインの奥深さが本当に面白いなと思えたこと。そして、実際にイギリスでイングリッシュガーデンの文化に触れられたことは本当にいい経験でした。帰国後は、家族で話し合って、農場の庭をもっと広げて本格的に庭を作って、庭が農場の魅力のひとつになるように挑戦してみることを決めました。何が起こるかは分からないけど、とにかく新しいことをやってみようという思いが強かったですね」

寒暖差のある北海道だから実現できる「北海道ガーデン」

2001年春、上野さん一家による本格的な庭づくりが始まった。しかし、あくまでも本業は米農家。農作業の合間合間での作業だった。さらに、その頃は知識や経験が足りないが故の試行錯誤が続いたという。

「ガーデンづくりはほぼ独学で、手を動かしながら覚えていきましたね。自分が植えたい植物を色々と植えてみるのですが、最初は枯らしてしまった花もたくさんありました。また、マイナス30度にもなる北海道の気候とイギリスの気候には差があるということも理解できていなくて、最初の2,3年は試行錯誤の連続でした。それでもトライアンドエラーを繰り返すことで、徐々に自分の作りたい庭を作れるようになっていきましたね」

その後、2008年までは農作業をしながらのガーデンづくりが続いた。しかし、その2008年に大きな転機が訪れる。それが「風のガーデン」の舞台となる庭のデザインを手がけたことだ。さらに、上野ファーム自体もロケ地になったことも加わり、上野ファームの認知度と来園者数は一気に増加。これを機に、上野ファーム、そして上野さん自身も「農場からの独立」を果たすことになり、ガーデナーとしての活躍の幅もますます広がることに。

一方、作りたい庭が形になっていくにつれ、どれだけ作り込んでもイギリスで体験したイングリッシュガーデンと同じにはならないということに気づくようになる。

「北海道とイギリスは近い部分も多い。でも、やっぱり歴史や文化、風土はまったく違います。そういった背景までをコピーすることはできませんから、どれだけ同じにしようと思っても同じにはならないのだと気づきました。そして、同じにならなくてもいい。むしろ、北海道でしか作れない独自のガーデンがあるんだと気づけたんですね。それを教えてくださったのは、道外からのお客さまでした。『どうしてこんなに大きく育つの? どうしてこんなに色が濃いの?』とよく質問されて、最初の頃は『特に何もしていませんよ』とお答えしていたのですが、これこそ寒暖差のある北海道という土地だからこその植物の育ち方なんですね」

それまで当たり前だと思っていた風景が、実は北国特有の景色だったとは。それに気づかされてからは、無理にイングリッシュガーデンと括らずに、北海道の気候風土に合わせて植物たちが咲く、「北海道ガーデン」だと考えるようになった。

「最近は、北海道の野草にも注目していて、積極的にガーデンに取り込んでいます。より北海道ガーデンという色が濃くなっていけばと自分なりに模索しているところです」

北海道の魅力と、ハーブの暮らしへの取り入れ方

「北海道ガーデン」という上野さんの考え方は「北海道ガーデン街道」の活動へもつながっていくことになる。北海道ガーデン街道とは、上野ファームを含む8つのガーデンをつなぐ全長250km(!)にも及ぶ広大で壮大な街道だ。「北海道ガーデン街道の魅力は、ただガーデンがつながっているだけではありません」と上野さん。それは、上野さんが考える「北海道の魅力」にも通じるものだ。

「北海道の魅力、それは田舎にこそあると思っています。通り過ぎてしまうような町にある何気ない風景。北海道ガーデン街道の道中も、稲作地域、畑作地域、丘陵地帯、山間部と様々な景色を楽しむことができます。なかでも、農村地帯は農家が作り出す一つのガーデンだと考えています。そういった車窓からの景色も含めて『北海道ガーデン街道』なんですね」

現在2000品種以上の植物が咲く上野ファーム。上野さんはそれぞれの花の特徴が全てインプットされているという。そんな上野さんに、気軽に始められる植物との暮らしについて伺った。

「室内の植木鉢でも簡単に育てられるハーブやミントから始めてみるのも良いですね。育てたハーブやミントは、摘み取ってお湯の入ったポットに入れるだけで即席ハーブティーやミントティーになりますし、ミントをお水に浸しておけば簡単なミント水にもなります。冷やしておいたミント水を洗顔の後にパシャパシャとつけるだけで、とてもスッキリしますね。上野ファームのカフェでも提供しているミントのスパークリングはオススメです。炭酸水にミントをガサっと入れて、甘みが欲しければシロップを少し入れるだけ。あまり難しく考えずに、まずは1鉢から気軽に始めてみていただけると嬉しいです」

ガーデナーは1日中太陽の下で紫外線を浴びる仕事だ。紫外線は肌に悪く、女性としては焼きたくないもの。上野さんも日焼け対策をかなり意識しているという。

「家に帰ってきてからの保湿はマストですね。どれだけ紫外線を浴びてもそれを補うような保湿が大切で、すごく太陽を浴びた日は時間をかけて保湿しています。ビタミンCも多くとるよう意識していますね。化粧品は美白にいいと聞けば何でもトライしてみる主義です(笑)」

ガーデンの美しさだけではなく、自身の美しさに対しても努力を惜しまない上野さんだが、「美」について次のように話を結んでくれた。

「綺麗なものをたくさん見ること自体が免疫を上げたり、気持ちを上げたりしてくれて、健康や美容にもつながっていくのだと思います。そういう意味で、ガーデンはすごくエネルギーを持っている場所だと思っています。上野ファームはひと月違うと景色ががらっと変わります。勢いがある時期だと、3日もあれば植物の雰囲気が変わる。同じガーデンは1日としてありません。秋は落ち着いたシックな庭。夏はビビットなビタミンカラー。春はフレッシュなグリーンが何よりも美しい。色々な季節に訪れて、季節の移り変わりやその瞬間を楽しんでいただきたいです。そして、花好きの人だけが訪れる場所でなく、もっと気軽に『今日ガーデンで散歩しようか』というくらいに、日常の暮らしに溶け込む存在になれたら嬉しいですね」

編集・文・写真/村田一樹 むらた かずき
北海道東川町在住のフリーランスデザイナー。「デザインは問題解決の手段」という考えの元、色や形を作るだけのデザインではない、「自由で美しい暮らし」をデザインしている。また、デザインパートナーやブランドディレクターとして複数の企業やブランドへも参画。「作りっぱなし」にならない継続的なブランディングを行っている。現在は東川町を拠点に、1年の数ヶ月を国内外の暮らしたい土地で暮らしながら、ジャンルを横断したデザイン活動を行っている。
http://kazukimurata.com

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